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駐妻文学の最高峰―「三匹の蟹」「青い落葉」

ろば夫にtwitterって何?
と聞いたら、のけぞられました。

すっかり先端技術に疎くなっている今日この頃。
1968年に芥川賞をとった小説を読んでいるようではアカンですな。と思いつつ
先日読了した大庭みな子著「三匹の蟹」、「青い落葉」。


三匹の蟹 (講談社文芸文庫)三匹の蟹 (講談社文芸文庫)
(1992/05)
大庭 みな子

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三匹の蟹,青い落葉 (講談社文庫 お 11-1)三匹の蟹,青い落葉 (講談社文庫 お 11-1)
(1972/11)
大庭 みな子

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「三匹の蟹」の方は短編で、芥川賞受賞作品。同じ文庫に入っていた「青い落葉」は同一女性が主人公の短編3連作をまとめたもの。


なんで海外情報ブログでこれを取り上げるのかというと、この作品、駐妻文学の走りであり(おそらく後続はない)、最高峰(ほかに頂きはない)であるからです。



特に「三匹の蟹」は、駐在員(もしくは駐在教員)の妻である主人公が、「本当のことが言えない」胸糞わるいホームパーティーのホステス役を放り出し、夜の遊園地で出会った見知らぬ男と関係するという話。

駐妻が置かれたうわべだけの社交の世界が上滑りなパーティーの会話によってリアルに描き出され、「退屈、無聊、孤独、寂寥の言葉は、一語も書いてないが、この無内容な時間を何とか過ごさねばならない、やりきれなさが、読みながら実に感じられる小説」(第59回芥川賞選評より)になっています。


実は作者の大庭みな子自身、アラスカのパルプ工場の技師の妻として、約10年の海外駐妻生活を送った経験を持ち、芥川賞を受賞したのはやっと37歳の時。当時遅れてきた大型新人などと騒がれたそうです。

以下は大庭みな子の随筆集「魚の泪」の一節ですが、「結婚して十数年、わたくしは意味のない言葉だけを拾いあげて、優美に喋ることで平穏無事な妻の座という報酬を得てきました。」とあります。
そう、この小説はまさに、「駐妻による駐妻の文学」なわけなのでした。




世間一般に、駐妻というのは「いいご身分ね」という揶揄として「史上最強」などと形容されたりします。
駐在員手当により上げ底された生活レベルの上に胡坐をかき、ランチに買い物、エステにゴルフ、子供はアーイに任せきり、みたい姿が人口に膾炙している通俗的駐妻像でしょう。


現象面でいうと必ずしも否定できなくて、厳しい労働条件を余儀なくされる異国おいて働かず、働かずして経済的に恵まれているということは、他のどんな不満をも口に出してはいけないという前提を作り出し、駐妻は半分蔑みの混じった「史上最強」の状況に満足してみせるためにも、無内容な時間を内容があるかのように華麗に装い、社交を絶やさず生きていかなければならないからです。

しかし、その上げ底の状況ですら実は自分が主体となって形成しえるものではなく、その証拠にビザは帯同家族扱い。「本当のことが言えない」のは身分上の不安定さに端を発したものであると思うのです。


その駐妻生活の退屈、無聊、孤独、寂寥を浮き上がらせてくれただけでも、この小説は読む価値アリ。そしてそれは、現代人全般に共通する孤独として、他のカテゴリーに所属する人にも共感できるように描かれていて、そこが有難~い感じのする小説なのです。



もう一方の「青い落葉」は、厳密に言うと小説の幕開けで女性主人公は27歳の留学生であり、そののち結婚して専業主婦となる33、4歳ごろが3部作の2作目、3作目にあたり、駐妻文学の様相を呈していると言えなくもない。

私は、言葉が多すぎ、洗練さには欠けるこちらの作品の方がより好き。
なにせ今度の主人公は駐在教員の妻でありながら、さらに確信的「はみ出し者」であり、それなのに「牧場の柵の中の牛」のごとく柵の中で寝そべっており、気を引かれる男性がいるとついつい関係を持ってしまうという形で、柵をたまにひょいと越えて遠出をしても、くたびれ果てては戻ってくるという中途半端さ。モラトリアムをさまよっているというわけです。(駐妻のモラトリアム!!)

その主人公がいかに青春と決別していくか、「誰にも本当のことを言えない」という地点から「他人に後ろ指さされても、もうどうでもよい」という境地までどう変わっていくかが、「三匹の蟹」の後を受け継ぐテーマ設定として興味深く描かれています。(書かれたのは先らしいが)


そういう意味で、駐妻という自分の置かれた立場になんだかしっくりこない人向け。
逆に言えば、現状に疑問を感じていない人には主人公の生き方は理解不能かもしれません。


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コメント


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未読だわ

大庭みな子、名前は知ってたけど、読んだことないです。
早速今度図書館で借りてくるわ♪

日本に帰ってからは毎週図書館に通ってます。本がたくさんあるのって幸せ!!思い返せば広州ではだいぶ飢えてました。日本に帰る度に大量の古本を買って帰っていましたっけ。

huizi | URL | 2009-11-17 (Tue) 17:10 [編集 ]


Re: 未読だわ

> 大庭みな子、名前は知ってたけど、読んだことないです。
> 早速今度図書館で借りてくるわ♪

是非是非!
特に「青い落葉」はオススメです。
「三匹の蟹」では、主人公の心理描写があまりない分、こちらの方が感情移入できるかも。

> 日本に帰ってからは毎週図書館に通ってます。本がたくさんあるのって幸せ!!思い返せば広州ではだいぶ飢えてました。日本に帰る度に大量の古本を買って帰っていましたっけ。

ろば子 | URL | 2009-11-18 (Wed) 17:13 [編集 ]


どうも~

こんにちは。

今日も楽しませてもらいました。
また遊びにきま~す。

占い | URL | 2010-01-17 (Sun) 22:40 [編集 ]


 

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